2007年にIPCC4次評価報告書が発表され、地球温暖化が人為的要因であることが明らかとなったことを受けて、地球温暖化防止をめぐる世界の動向は一変した。わが国でも、2008年6月の洞爺湖サミットにおける福田ビジョンで「2050年にわが国のCO2を60〜80%削減すること」を掲げ、2009年9月には新政権の鳩山首相が国連において「2020年にCO2を25%削減すること」を公約した。海外では、EUがCO2の80%程度の大幅削減を提唱し、アメリカはグリーン・ニューディールとして雇用と2050年にCO2の80%削減などを打ち出し、大きな転換期を迎えた。
このようななか先進国でほぼ共通の目標となっているCO2の80%削減は、省エネルギーの推進だけでは達成不可能であり、エネルギーの低炭素化、即ち、化石燃料依存からの脱却が必要で、再生可能エネルギーの大胆な導入が不可欠となる。ここでは取り組みの遅れている再生可能エネルギーについて取り上げる。再生可能エネルギーについては、RPS法に加え、2009年7月にはエネルギー供給構造高度化法にてエネルギー供給事業者に太陽光、風力等の再生可能エネルギー源等の非化石エネルギー源の利用などを促進するために必要な措置を講じることが義務づけられ、2009年11月には太陽光発電の固定価格買取制度が開始されている。また、東日本大震災以降、将来的なエネルギー供給システムへの貢献として再生可能エネルギーの重要性はますます高まり、2012年7月には太陽光発電以外の再生可能エネルギーについても固定価格買取制度が開始されるなど推進の動きが加速している。これらの動きと連動させ、再生可能エネルギーの導入を更に促進するためには、意欲的な目標を設定し、市民・企業のやる気を引き出し、成長のスパイラル構造を社会の中に埋め込む必要がある。この取り組みは、新たな基幹産業の育成、日本の競争力強化にもつながるものである。
本部会では、「再生可能エネルギーのスパイラル成長のしくみ」の実現を目指し、低炭素社会実現のために、いかにして再生可能エネルギーの大幅導入を進めるか、技術動向及び開発・普及のための制度の両面から調査・検討を行う。
そのために、進歩の著しい太陽光発電、風力発電、バイオマスエネルギーなどの再生可能エネルギーの利用技術とこれらエネルギーの導入拡大を支える技術・インフラ・マネジメント(スマートグリッド)の技術動向、および再生可能エネルギーを含めた電気、熱エネルギーのスマートな利用を目指す技術の動向、さらに太陽光発電以外の再生可能エネルギーの買取制度、排出量取引(特に国内クレジット)など再生可能エネルギー促進のための施策、政策動向など多岐に渡る調査・検討の取り組みを行う。
【2.活動概要】
平成21年度から平成22年度までを第1期活動期間として、再生可能エネルギーの大幅導入を進めるため、技術動向及び開発・普及のための制度の両面から基礎的な調査・検討を実施。
・先端技術開発の状況および、実際の導入事例、課題について調査検討
→下水バイオマス発電、洋上風力、大型風力、バイオマスからのエタノール製造、ヒートポンプ、スマートグリッド(TIPS)、地熱利
用、民生部門の低炭素化(うちエコ)、太陽熱による街区熱供給、スマートハウス、クールチューブ、運輸部門の低炭素化(次世
代自動車、インフラ)
・開発・普及促進に効果的な施策制度について調査検討
→市民出資ファンド、固定価格買取制度
平成23年度からの第2期活動期間では、最新の事例を中心に可能な限り現地に赴いて調査・検討を実施していく。堺での大規模太陽光発電、国内初となる鹿島灘での洋上風力ならびに神戸での下水道バイオガスの都市ガスへの供給などの再生可能エネルギーの最新技術動向、再生可能エネルギーの大幅導入を実現するための国内外でのスマートグリッドの技術動向及び展開事例、再生可能エネルギー、創エネ、省エネを組み合わせた次世代環境配慮型の工場、オフィスビル、住宅等における最新の取り組み事例、再生可能エネルギーを中心とした電気と熱のエネルギーネットワーク構築事例、また、東京都における低炭素都市作りモデル等の自治体及び地域の特徴を活かした地方での取り組みの最新事例などの調査・検討に取り組む。
(1)先端技術開発の状況および実際の導入事例、課題について調査検討
再生可能エネルギーに関する先進技術について、研究機関、企業等の先端技術開発の状況および、実際の導入事例、課題について最新の動向を調査・検討する。
調査検討の実施にあたっては、第1期で取り上げていない中小水力、バイオマス熱利用、雪氷熱ならびに先端技術の進捗が著しい太陽光発電、風力発電、バイオマスなどについても最新の開発状況、導入事例について調査し、課題の抽出と検討を実施する。
(2)開発・普及促進に効果的な施策制度について調査検討
再生可能エネルギーは、広く薄く分布する不安定で低品位なエネルギーであり、自然が長時間かけて精製・蓄積した高品位エネルギーである化石燃料とは、同じステージにたって見るのは困難である。そのため、再生可能エネルギーに関する技術開発、導入の取り組みを促進させるたには、CO2削減等の位置づけ等を行っての何らかの制度的な支援が必要となる。
ここでは、再生可能エネルギーの開発・普及促進に効果的な施策制度、例えば、環境税、排出権取引、投資減税、発生エネルギーの優遇価格買い取り等の枠組的な制度について調査・検討する。また、地域的な活動支援やグリーン認証など市民参加を促すような施策、「緑の分権改革」のような地産地消、地域特色を活かしたエネルギー開発の取り組み、国交省を中心とした「低炭素都市づくり」の推進状況等についても調査・検討を行う。これらについては「新成長戦略」「エネルギー基本計画」、「第4期科学技術基本計画」など中長期の国家戦略についての具体的な動向を含め調査・検討する。
(3)再生可能エネルギー大幅導入を視点としたスマートグリッド等の調査検討
再生可能エネルギーの導入を促進する視点として、発生したエネルギーの大きな受け入れ先
となる電力系統等のインフラがいかに大量の再生可能エネルギーを受け入れられるか(スマー
トグリッド)、また都市排熱や再生可能エネルギーからの熱エネルギーの利用を含めたエネルギーのスマートな利用の観点からも調査・検討を行う。具体的には日本及び海外でのスマートグリッド実証状況、また電気と熱のスマートなエネルギー利用、環境を配慮した次世代都市などについて調査し、その問題点について検討を行う。
(4)再生可能エネルギーの大幅な導入に向けた方策の提案
上記の検討を踏まえ、低炭素社会実現のための、再生可能エネルギーの大幅な導入に向けた方策を提案し、報告書としてまとめる。
【3.体 制】
部 会 長 鈴 木 胖 (公財)地球環境戦略研究機関 関西研究センター所長、大阪大学名誉教授
副部会長 下 田 吉 之 大阪大学大学院工学研究科環境・エネルギー工学専攻教授
委 員 産業界、官界より25名程度
